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Column
わたしの時代
個の遊園地
2008年08月04日(月)
廃墟を集めた本が人気だ。
バブルの賜物たちの亡骸に、人は惹きつけられるのだという。
モノクロと見間違えるようなグラヴィアには、観覧車や大がかりな遊具が並ぶ。廃れたレジャーランドは、不安を煽り立てるような写真の背景になった。

レジャーランドが旅の目的地だった時代、そこに楽しみがあれば、長いドライブも厭われなかったのだろう。
過ぎた時代の日曜日。車中で交わされる非日常的な会話。園内での記念写真。充足感と寂寥感を疲れの中に隠した家路。レジャーランドは人里離れた郊外に建てられた。

90年代以降、いくつの遊園地、テーマパークが閉園しただろう。山を切り開いたレジャーランドは今、残滓を写真に撮られ、また多くは土に還ろうとしている。
私が行ったレジャーランドといえば、せいぜいスペースワールド(北九州市)か「いとうづの森公園」(同)。ディズニーランド(浦安市)にも行ったことはあるが、ここだけは別格だ。
しかし、別格であろうがなかろうが、「家族みんなで行きましょう」というイメージを私たちはどこのレジャーランドにも持つことはできない。カップルのものであり、友達同士で集うものであり、“親子”で楽しむもの。それがレジャーランドの今の位置づけではなかろうか。

それゆえ、現地集合・現地解散ができ、園の内外で多様な選択肢を持てる都心部のレジャーランドが生き残った。上述した3つは未だに営業しているし、周辺はレジャーランド以外の楽しみを容易に見つけられる。
家族全員で時間をシェアする場であるならば、アクセスが多少不便でも、周辺にショッピングモールがなくても問題はない。一緒に行って、一緒に帰られれば万事うまくいった。

核家族化などという生易しい言葉では片付かないのかもしれない。
大家族を知らない世代だが、核家族の中にも自分のスペースを求めてきた。干渉を避け、気の合う少数でコミュニティを形成するか、無数の“個”で構成した今にもちぎれそうな集団に身を置いて、保身の中で生きてきた。

私たちが自動車の狭い車内に何人も閉じこもって、往復半日のロングドライブに耐えられるだろうか。
車内で交わされるのは、外に話題を求めたありきたりの会話だろうし、帰路など疑心暗鬼と疲れで車中が重苦しいのは想像に難くない。

虚空、虚無の山中にひっそりと眠るレジャーランド。
轟いていた歓声は私たちには聞こえない。


(写真の場所と記事は関係がありません)

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