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Column
わたしの時代
【ちまきや】井筒屋に営業譲渡
2007年11月14日(水)
 ちまきや(山口市)は14日、同市中市町の百貨店を井筒屋(北九州市)に引き継ぐと発表した。08年8月末で一度閉店し、同10月から井筒屋子会社が営業再開する。

 両者はことし9月、業務提携を発表。提携委員会を設置し、井筒屋がちまきやに社員を派遣していた。

 ちまきやは1855年に創業した呉服屋発祥の老舗百貨店。97年には年間約87億円を売り上げていたが、その後経営環境が悪化し、06年は同約73億円にとどまっていた。03年に山口銀行が支援に乗り出すなど、経営再建を模索していた。

 井筒屋は、連結子会社の宇部井筒屋と、譲渡されるちまきやの経営を一本化し、商号「山口井筒屋」のもと、山口県内では山口と宇部の2店舗を展開していく。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

【解説】

 百貨店再編は地方にも波及

 今年にかけて大手百貨店の再編が進んだ。三越と伊勢丹、大丸と松坂屋(Jフロントリテイリング)、そごうと西武(ミレニアムリテイリング)、阪急と阪神などが統合を発表またはすでに経営統合した。丸井やその他の電鉄系百貨店は統合していないが、大手の再編は一段落したと言えよう。
 一方、今度は地方に再編の波が波及しつつある。
 地方の百貨店はほとんどが経営環境は良くない。景気が改善していないのに加えて、郊外型ショッピングセンターとの競合と百貨店が店を構える中心市街地の空洞化が、客足を遠のけている。商圏人口が数十万人規模の都市にある百貨店は軒並み、これらの理由で厳しい状況にある。しかし、地方百貨店でも、集客力のある市街地に立地している百貨店では、状況はやや異なる。このたびちまきや(山口市)を譲り受けることになった井筒屋(北九州市)は、同市の小倉や黒崎駅前、福岡市などに店舗を持ち、年間の連結売上高は1100億円を超す。大分市のトキハも連結で1千億円超、熊本市の鶴屋は700億円を売り上げる。大手百貨店が進出している地方都市では、地場の百貨店が大手百貨店に勝る売り上げを誇っている場合も少なくなく、地方の百貨店も、いわば“勝ち組”と“負け組”に分類される。もちろん、勝ち組とはいっても、大きな利益が出ているところは皆無であり、いずれにしても将来への不安はあるだろう。
 こうした中で、井筒屋などが、中小百貨店のちまきやに触手を伸ばし、多店舗展開に打って出るのはなぜか。赤字の百貨店を抱え込むことは賭けでもあるが、双方が隣接県程度の距離しか離れていないのであれば、マーケティングや仕入れなどで経営の効率化が図れるであろうし、客に対する知名度もあり大きく宣伝する必要はない。地方都市としてもこの時代では、閉店したままの百貨店が残るよりは、どこであれ百貨店が引き続き入ることに異論は出しづらく、買収する側が経営の支援を取り付けることも可能かもしれない。
 それでも、大きなリスクを背負うことに変わりはない。この点で、大手百貨店同士の経営統合とは事情が異なるが、「百貨店の灯を消さないために」という地方の切実な思いが見え隠れする地方百貨店の再編は、これからも続きそうだ。

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